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<復興予算>堺市に批判400件 がれき未処理で86億円

東日本大震災で発生した災害廃棄物(がれき)を処理しないものの、国の復興予算から86億円を受け取る堺市に、風当たりが強まっている。国の制度に基づく予算措置のため、竹山修身市長は「ありがたくいただきたい」と話していたが、市に寄せられた批判の電話やメールは約400件に上った。復興予算を充てるごみ焼却場、堺市クリーンセンター臨海工場は、17日に完成式典が開かれ、4月から本格稼働するが、高まる批判を受けて、市は新たな被災地支援の検討を始めた。

 「市民のために、ごみ焼却場は造らなければならない。財源確保は首長の責務だ。ありがたくいただきたい」。先月25日の市議会で竹山市長はこう答弁した。

 しかし、市には今月10~14日、少なくとも395件の電話やメールなどが相次いだ。「被災地から何と言われるか」「被災者のための金。国に返して」など、ほぼ全てが批判だという。

 13日の衆院予算委員会でも、日本維新の会の足立康史氏(大阪9区)が「このお金(の財源)は復興増税で国民の気持ちが形になったものだ。『ありがたくいただきたい』という市長発言はいかがなものか」と批判した。

 竹山市長は13日の市議会で発言を軌道修正、「被災地の復興に直接活用されるものであるという住民の声は重たい。(復興予算とは別に)復興支援の方策を早急に検討したい」と、被災地への配慮を強調した。

 環境省は11年度補正と12年度予算の復興財源枠で、震災がれきを受け入れる処理施設整備などに予算を充てると通達。抵抗の強い受け入れについて、検討すれば交付し、結果的に実行しなくても「返還不要」と大盤振る舞いを決めた。堺市も「検討した」として交付内定を受けた後、がれきの総量が判明し、受け入れ先から外れた。全国で他に6市町と3団体が同様の状況にある。

 堺市東区のタクシー運転手の男性(62)は「がれきを受け入れないのに復興予算をもらうのは、一市民として腹が立つ。制度上悪くなくても人の道としておかしい。返すべきだ」。堺市北区のパート女性(63)も「東北の被災地で困っている人は、まだいっぱいいる。なぜもらえるのか」と返金を希望する。

 元神奈川県逗子市長の富野暉一郎・龍谷大特任教授(地方自治論)は「税金なので、がれきを受け入れないなら交付しないようにするのが国の責任」と指摘し、「受け取る側も事業の規模を見直して余剰金を国に返せばいい。被災者の気持ちをくみ、道義的な面で誠意を見せてほしい」と話した。【山下貴史