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日本滅ぼす国防の“大穴” スキを作って乗ぜられるな

【風を読む】

 日本は平時に自衛権を行使できない。このことが尖閣諸島への中国の攻勢を呼び込み、北朝鮮による拉致を許してきた大きな要因であることにもっと目を向けたい。

 先月8日に首相官邸で開かれた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の初会合で、ようやく、この問題が取り上げられた。

 「個別的自衛権に関して、わが国は防衛出動が下令されないと自衛権が発動できない。だが、防衛出動以前の緊急事態にどう対応するか」

 「グレーゾーンの問題がある。その一つは低水準の戦闘活動にどう対応するかだ。日本は『マイナー自衛権』という形で説明してきたが、非常に曖昧であったと思う」

 複数の委員が指摘したように、日本が自衛権を行使できるのは防衛出動に限られ、しかも発動の要件は「わが国に対する武力攻撃が発生した場合」であり、かつ「他国による計画的、組織的な武力攻撃」が行われたときと政府は答弁している。50年ほど前に確立した政府解釈は、当時の極東ソ連軍が大部隊で計画的、組織的に北海道に侵攻してくることを想定したものだ。

 だが、どこの国かわからず、計画的、組織的な攻撃でない「主権を侵害する不法行為」を実力で排除することに目をつぶり、座視してきた。日本だけの異様な現象である。

 確かに政府は過去に、「マイナー自衛権」の立場を示し、武力攻撃以外の侵害に対し、自衛権を行使できるとの見解を示したことがある。

 昭和35年4月の衆院安保特別委員会で、高橋通敏外務省条約局長が「国境における歩哨の撃ち合い」を例に「とりあえず対抗する」場合は「武力攻撃ではございませんが、一つの自衛権の発動または行使ということが考えられると思います」と答弁した。しかし、なにも具体化されなかった。この国防の「大穴」を早急にふさがないと国は滅ぶ。

 国民の安全と生存を守るため、安倍晋三首相と懇談会の使命は重い。是正は待ったなしである。(論説委員長 中静敬一郎)