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<中国>改革途上、問われる手腕…李克強首相を選出 全人代

【北京・工藤哲、井出晋平】中国の全国人民代表大会(全人代)で首相に選ばれた李克強(り・こくきょう)氏(57)=共産党政治局常務委員=は、自然災害の被災地などに自ら足を運び「庶民派宰相」として親しまれた前任の温家宝(おん・かほう)氏(70)に比べると、党組織で順調に出世したエリートのイメージが強い。今後は、国民の支持をどのように集め、所得の分配や持続的な成長といった課題にいかに取り組むのか、その手腕が問われている。

 李氏は安徽省で生まれ、文化大革命中には慣れない農作業をしながら勉学に励んだ。文革後に再開された77年の大学受験で北京大学に合格し、大学内の共青団幹部として頭角を現した。共青団中央では胡錦濤(こ・きんとう)氏(前国家主席)から直接指導を受けた「共青団派」の筆頭格だ。

 理系出身者の多い歴代の中国指導者では珍しく、経済学の博士号を取得した文系エリートで、早くから将来を有望視され、河南省遼寧省で党委書記を務めた。しかし、河南省では災害や売血によるエイズ感染が拡大した問題で苦境に立たされた経験もある。07年の党大会で習近平(しゅう・きんぺい)氏に次ぐ序列7位で政治局常務委員に昇格し、「ポスト胡」の座を譲る形となった。

 副首相時代には財政や経済発展政策などマクロ経済分野を担当。昨年11月の党大会後、首相就任が確実視されてからは「改革こそ最大のボーナス」と述べるなど、生産年齢人口の減少が始まった中で成長を維持する改革の継続が必要との考えを強調している。

 中国では、経済成長の鈍化に伴い、輸出・投資主導から内需主導への転換が課題となっている。また、拡大する格差解消も待ったなしの課題だ。貧富の差を示すジニ係数は、12年は0.474。「1」に近いほど格差が大きく、警戒ラインといわれる0.4を超えている。従来の高い経済成長が望めない中、格差を放置すれば庶民の不満を増大させ、一党支配体制を揺るがしかねない。

 中国政府は今年2月、所得分配制度改革の基本方針を発表。低所得者の収入増や、高額所得者への課税徹底などを盛り込んだ。だが、収入増の具体的な政策はこれからだ。所得分配制度改革は、「胡-温体制」でも実現できなかった。背景に国有企業など既得権益層の抵抗があったとされる。改革を実現するには、抵抗勢力の反発を抑えられるかがカギになりそうだ。

 対日関係では日本の経済団体トップと頻繁に会い、昨年5月も北京で鳩山由紀夫元首相と会談した。日中関係の重要性に理解を示す一方、鳩山氏には、中国の「核心的利益」に関して適切に対応するよう求めた。近年は中国の原則的立場を表明する発言が目立っている。

 一方、15日の全人代では最高人民法院の院長(最高裁長官)に周強(しゅう・きょう)湖南省党委書記(52)が選出された。周氏は「ポスト習近平」の第6世代だが、昨秋の党大会では政治局入りを果たせず、法院トップを務める形となった。